勇者 由美

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「でもさ、何で仇の跡取りの先輩を一族の婿に迎え入れようなんて計画したわけ? 普通だったら”敷居もまたがせてやるものか!” ってなるんじゃないの?」 「うん。そこが分からないんだよね」  先輩を桜の婿にしようとしたり、桜を陰陽師に弟子入りさせたり。とても仇討ちとは思えない。 「先輩を神社の婿にして陰陽師の跡取りをいなくさせるつもりなのかな?」 「そんな単純な事? だって生贄を捧げてまで何とかしようとしてたんだよ」 「だよね」  罪のない見ず知らずの人間を生贄にしようなんて相当な恨みがなければしないはずだ。何で社長はそこまでしようとしていたのか。 「でももう生贄捧げる悪霊もいなくなったんでしょ? だったら被害者は出なくなるから安心だね」  社長や桜たちは御神体が偽物という事は知らない。禁足地の主が御神体だと信じている。でも桜には分かっていたはずだ。御神体の力が弱くなって来た事を。 「あ、だから満明を御神体に昇格させて祀る気だったのかも」  わざわざテレビの生放送で満明の怨霊を呼び出し、その生涯を披露する事で世間の同情を買う。そしてその怨霊を封印し神社で祀ると宣伝すれば参拝者も増え満明が御神体として世間に認められる。 「でも満明も成仏しちゃって鏡は空っぽ。釈放されて帰ってきたら驚くだろうな」 「そりゃショックだろうね」 「でもその代わりに御神体がパワーアップしてるって分かったら」 「何が何だか状態だろうねー」 「ついでに先輩も出てっちゃって、テンヤワンヤだろうなー」
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