勇者 由美

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 由美と一緒に桜をディスると楽しくて止まらない。でも冷静に考えるとちょっと可哀想な気もする。いやいや、それが先輩を騙した報いなのだ。しばらくは慌てふためくがいいさ。 「本当は御神体いなくなって神社が廃れればいいと思った」 「それで桜親子が路頭に迷って不幸になればいいって?」 「……うん。私って酷いよね」 「恋敵にはそれくらい思って当然だよ。でも愛は可哀想って思っちゃったんでしょ?」 「うん……ちょっと」 「甘いなー」 「でも桜が不幸になれば先輩が同情して優しくしちゃう危険がある」 「先輩優しすぎるからね。でもそこが好きなんでしょ?」 「……まあね」  先輩は置き土産に優れた御神体を残してきた。それが叔父さんの指示だとしても先輩もそうすべきだと思ってしたんだと思う。 「何で叔父さんも新しい御神体をプレゼントしたんだろう。自分を狙ってる一族なんだから放っておけばいいのに」 「満明がご先祖様だから? 神社はご先祖様の子孫だからかな」  叔父さんも先輩と同じで優しすぎるのかもしれない。命を狙われているとしても同じご先祖様の血を引く遠い親戚を放っておけなかったのだろう。いや叔父さんだけじゃない。ひいお祖父さんもそうだ。恐ろしい悪霊を自分で持ち帰り代わりに式神を残してきた。  先輩一族はみんな優しい。きっとご先祖様の優しい遺伝子は先輩たちの方へ、荒々しい遺伝子は社長たちの方へと別れてしまったのだろう。
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