原因

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「桜もこっちに腰を落ち着ける事になったんだ。神社の次期神主になるためにね」  先輩に逃げられて神主になる覚悟を決めたのか。って事は特殊任務だけが”クビ”って事なのだろうか。 「分かりました。あの、それでお天気キャスターの方は……」 「ああ、今まで番組を盛り上げてくれてありがとう。評判いいみたいだね」 「じゃあ」 「ご苦労だったね」 「え」 「女の子が深夜の仕事は大変だよね。今度は年配の男性キャスターをお願いする事にしたよ」  …………な、な、何と。  座っているはずなのに足元が崩れていくような感覚に襲われた。急降下して地の底へ落ちていくような。  これがお払い箱にされるという事なのか。いらなくなったゴミはダストシュートにポイされ始末されるのか。まさか私がゴミになるなんて……。 「失礼します」  秘書さんがお茶を運んできた。目の前にカップが置かれた。いい香りがする。ゴミ溜めにもいい香りがあるのか。ああ、惨めだ。優秀なる秘書さんに合わせる顔がない。私はただ俯いていた。
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