原因

4/13
前へ
/468ページ
次へ
「おお、いい香りだね」  社長は嬉しそうにお茶を啜る。ゴミを捨ててスッキリしたようだ。  私の替えなんていくらでもいるのだ。私なんていなくても世の中は回るのだ。私なんてただのゴミだ。ゴミがお天気キャスターを目指したからこんな辛い思いをする羽目になったのだ。一瞬でもいい夢が見られた。諦めよう。諦めなきゃ……。 「栗本さん、今日の社長はとてもご機嫌が良いようですよ。お話したらどうかしら? こんな機会滅多にないわよ」  いきなり秘書さんがそう言った。 「いや、別に今日は特別にいい事があったわけではないぞ……だが、何か確かに気分がいいなぁ。うん、言いたい事があれば何でも言いなさい。そうだな。たまには若い女性とゆっくり話をするのも楽しかろう。ワハハハ」  社長が急に笑いだした。え?  秘書さんを見ると社長に背を向け私をガン見していた。そしてメガネの奥の鋭い目で……ウインクをした! 秘書さん、お茶に何か入れた???  
/468ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加