原因

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「おっと、せっかくの楽しい雰囲気が壊れてしまう。失礼」 「いえ、聞きたいです。社員のお母様って女優さんだったんですよね」 「よく知ってるな。それも霊能力か?」 「えっと……社長の後ろに美しい女性がいます」 「おお、そうなのか! お母さんは私の後ろに……」  私の嘘に社長は目を潤ませた。 「今の母親は厳しくも愛情深く私を育ててくれたんだよ。父親がテレビ局勤めで忙しくて殆ど家にいなかった分、母親はいつも側にいてくれたんだ。私はそれを当たり前として、今考えると幸せにくらしていたんだ。それを……それを陰陽師が壊したんだ!」  ここで陰陽師登場!  「母方の祖父が議員だったんだ。選挙があって当選したのでパーティーが開かれた。当然私も家族で招かれた。まだ小学生なのにスーツを着てネクタイを締めて参加したよ。 テレビで観る偉い人たちに祝福されるお祖父さんを誇らしいと思ったよ。その時はまだ自分もその血を引いていると信じていたからね。 ところがその参加者の中に陰陽師がいたんだ。必勝祈願をして見事当選させてくれた、とかでね」  社長の顔は無表情だった。きっと苦々しい思いはあるものの秘書さんの仕込んだご機嫌な薬のせいで感情が相殺されているのだろう。
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