原因

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「そこで陰陽師は言ったんだ。”お母さんに似て美しいお坊ちゃんですね”、と」  美しいお坊ちゃん……社長が? そう言われて良く見ると社長の目は切れ長で鼻も高い。華さんの面影はある。きっと若い頃はモテただろう。しかし今は歪んだ性格がその麗しさを覆い隠している。残念! 「私の母はお世辞にも”美しい”とは言えない。政治家のお父さん譲りの三白眼、鷲鼻……。陰陽師にそう言われ初めて私は自分の出自に疑問を持ったんだ。確かに私は母とは全く似ていない」  陰陽師様罪な一言を……。 「私は両親を問いただした。そして父が話してくれたんだ。真実を」  今こそ言わなきゃ!  「社長、それは嘘です! 社長のお母さんは……」 「分かってるよ」 「え?」 「悪魔だ呪いだなんてそんなのありはしない。父の妄想だ。おおかた父が浮気相手に産ませた子を引き取った、そんな所だと子どもながら想像できた。母の他に女はたくさんいたからね」  それなら何で? 「母も政治家の父を持っていたから男の浮気は甲斐性だと理解していた。しかし子どもが出来ない自分を差し置いて子どもを産んだ女は許せなかったみたいだ。その上その子どもを置いて蒸発してしまうなんて女の風上にも置けないと怒っていたよ。だから自分がしっかり育て上げようと決意したそうだ」 「凄くできたお母様だったんですね。女の鑑みたいな」 「ああ、尊敬しているよ」  私にはとても真似できない、見上げた根性の女性だったんだ。
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