原因

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「何だか知らないが喋り過ぎてしまった。今夜はどうしてしまったんだろう」  社長は普段の社長に戻っていた。もう笑わなかった。 「最後にひとつだけ聞いてもいいですか?」 「何だね?」 「先輩……陰陽師様の跡取りを桜さんのお婿さんにしようとしたのは何故ですか?」 「何でそんな事を聞くのかね?」 「……社長は陰陽師様を恨んでいて、その跡取りを婿にしようなんて。私には理解できかねます」  社長は私をじっと見つめた。そしてふっと寂しそうな目をした。 「父もそうだったが、私も会社のためにと銀行の頭取の娘と一緒になったよ。父よりはマシだが、やはり満たされない。 私にも好きな人はいた。しかし一緒になる事は許されなかった。 好きな人と一緒になるのが一番だろう。だから私は桜の力になろうとした。だが相手には思う人がいた、それだけの事だ」  え、じゃあただ単に社長は桜の恋を応援したってだけで深い意味はなかったと? でも好きな人と一緒になれなかった社長にとっては深い思いがあったのだろう。  ……ちょっと待て。相手には思う人がいた? それってどういう……。
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