原因

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「栗本さん、顔変よ」 「え!」  ニヤケ過ぎて変な顔になっていたらしい。秘書さんに言われ慌てて真顔に戻した。 「詳しい話は番組プロデューサーから連絡行くはずだから、あとはプロデューサーと話をしてください。じゃあ改めて。今まで心霊担当ご苦労様。これからはお天気キャスターに専念して、良い番組にしてください」 「こちらこそ色々勉強させていただきました。ありがとうございました」  社長が右手を差し出した。私はチラッと秘書さんを見た。秘書さんは小さく頷いた。私は社長の手を握った。初めて握った社長の手は温かかった。  社長の部屋を出て辞令を胸に抱き暫く嬉しさに浸っていると秘書さんがカップを下げて来た。 「あ、私飲み損なっちゃいましたけど、凄く良い香りがしてましたね」 「飲まなくて良かったわよ」 「……それ、何のお茶ですか?」  秘書さんはニヤリと口角を上げた。 「笑い茸……」 「だから社長笑ってたんですか」 「ブランデーも」 「酔わせてご機嫌にさせたんですね」 「そして極めつけは……オオカミナスビ」 「オオカミナスビ?」 「別名ベラドンナ。自白剤よ」  飲まなくて良かった……。  
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