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「桜さんから連絡は?」
『全くない。僕の好きな物を聞いてお料理作ってくれたり洗濯してくれたり。お世話になったのに何も言わずに出てきちゃった。お礼の電話くらいしなきゃね』
「ダメです! 絶対ダメです!」
先輩は桜が優しさから身の回りの世話をしてくれたと思っているようだ。しかしそれは違う。好きだから、近い将来一緒になれると信じていたからだ。傷心の桜に先輩が優しい言葉をかけたらまたその気になってしまうだろう。
「桜さんは家を継ぐ覚悟を決めたそうです。お礼ならメールでいいと思います」
『でもそれも失礼なんじゃ』
「先輩は桜さんになんて言ってたんですか? 僕が後を継ぐとかずっとここにいるとか言ったんですか?」
『ううん。しばらくの間、満明が落ち着くまではいる。でも僕は陰陽師を継ぐからとは言っておいたよ』
「それから?」
『それから? う〜ん、お父さんに婿に来てくれって言われたけど』
「言われたけど?」
『僕には心に決めた人がいるから……って』
こ、こ、心に決めた人……!
「それは誰ですか! ……って、これは聞いちゃいけなかったですね。聞かなかった事にしてください!」
ヤバい。つい焦って聞いてしまった。知りたい、メチャ知りたい。でもそれが私以外の人だったら。
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