恒例行事

10/11

214人が本棚に入れています
本棚に追加
/468ページ
 みんながお喋りをしている間、執事たちはどんどんとテーブルに料理を並べていく。おせち料理なので蓋のしてある重箱だ。しかし収まりきらなかった料理がはみ出している。海老の尻尾、それもかなり大きい。もしかしたら伊勢海老? 他にも串が何本も見える。あれには何が刺さっているのだろう。とにかく部屋中良い香りが充満している。食べたい、早く食べたい……!  ピンポーン  誰か来たようだ。そんな事はどうでも良い。お腹が空いた。私はキッチンへ行き取皿を運ぶのを手伝った。とそこへお母さんが。 「愛、あとはお母さんがやっておくから行きなさい」 「え?」 「先輩よ」 「!!」  慌てて玄関に走った。 「明けましておめでとう、愛ちゃん」  ご来光のような眩しい笑顔がそこにあった。 「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」  ペコリとお辞儀をすると先輩も「こちらこそ」と言って頭を下げた。 「もう行けるのかな?」 「えっと……」  先輩との初詣は勿論楽しみ。しかし料理の誘惑に返事が出来ずにいた。
/468ページ

最初のコメントを投稿しよう!

214人が本棚に入れています
本棚に追加