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「先輩見っけ!」
「愛ちゃん! 良かった。もうはぐれないように……」
先輩はそっと私の手を握ってくれた。うわっ、恥ずかしい! などと思っている余裕はない。大混雑の境内は満員電車状態。ギュウギュウ押され否応なく先輩とくっついてしまう。そう、あくまでも否応なく、だ。
何とか拝殿に辿り着き、私と先輩は手を離し参拝をした。
(昨年はとても充実した年になりました。ありがとうございました……)
後ろからの圧力もありゆっくりお祈りもしていられなかった。自然に先輩と手をつなぎ合い神社を後にした。
「せっかく来たのにゆっくりできなかったね。ごめんね」
運転しながら先輩は申し訳なさそうに言った。
「元旦に参拝する事に意義があるんです。今日来られて良かったです」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。混雑する所に誘っちゃって悪かったかなって思って」
「混雑してなきゃ先輩と手なんか繋げなかった……あ! 何でもありません!」
つい先輩をフォローしようとして本音が出てしまった。
「……何かお願い事した?」
「え……先輩こそ」
「う〜んと……神社は感謝する所でお願いする所じゃないから」
「ですよね」
律儀な2人は神社ではお願い事はしなかった。ラブコメならここで「また来年も2人で来れますようにってお願いしちゃった♪」なんて言って、いい雰囲気になるんだろう。神道に通じていすぎる弊害だ。
「……来年」
「え」
「来年はもっと空いてる神社に行こうか」
「はい!」
空いてる神社でも手を繋いでくれますか? 先輩……。
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