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「ただいまー。ハッ!」
良い香りがする。つい最近嗅いだ覚えのある……。
「あーやっぱり!」
茶の間のテーブルの上には住職の家にあったお料理が並べられていた。
「家族で食べてって持たせてくれたのよ」
「やった! さすが住職!」
「えっと……」
「ああ桃林さん、座ってくださいな」
「ありがとうございます。あ、明けましておめでとうございます」
先輩はお父さんに挨拶をした。
「うん、おめでとう。いつも愛がお世話になってます」
「いえ、こちらこそ」
「まあ……一緒に食べましょう」
「ご馳走になります」
私とお母さんは飲み物やお皿を用意しにお勝手に行った。その間お父さんと先輩は黙ったまま座っていた。2人が会うのは初めてだったっけ。先輩は緊張の面持ち。ちょっと可哀想に見えた。
「さあ食べましょう。桃林さんお酒は?」
「いえ、車で来ているので」
「泊まってけばいいわよ」
「お母さん!」
「桃林くん……だっけ? 普段は飲むのかな?」
「殆ど飲みません。下戸なんです」
「そうか、そうですか」
お父さんはちょっと嬉しそうな顔をした。
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