木目込人形

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木目込人形

「それでは良い週末を!」  今日は金曜日。週末はお休みだ。さっさと帰ってレポートやらなきゃと思っていたらプロデューサーから呼び止められた。 「社長がお呼びだ。行ってくれ」  こっそりと小さな声でそう言った。  社長とは辞令を貰った時に1回会っただけだった。そう、裏の辞令を。密かに誰にも知られずに社長室へと行った。社長は優しそうな顔をしたお爺さんだった。例えて言うなら"福助"のような、にこやかで福の神みたいな顔だった。しかし社長室に入った途端私はめまいに襲われた。とても居心地の悪い部屋だったので行きたくない。でも呼ばれたのなら仕方ない。  憂鬱な気持ちで私服に着替え、私は社長室へと向かった。 「栗本です。失礼します」  社長室のドアを開ける。しかしそこに社長はいない。社長本人のいる部屋の手前に関所のように秘書の事務室がある。そこで本人確認や要件、アポの有無などを聞かれ、問題ないと判断されると初めて社長の部屋へと通されるのだ。 「どのようなご要件ですか?」  年配の秘書が不審者を見るような目で私を見た。私は社員証を見せ社長から呼ばれた事を話した。
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