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「伺っております。社長は随分お待ちでしたよ」
平社員のくせに社長を待たせやがってみたいな口調だった。そんな事言ったってさっきまで本番だったんだもん。
「社長、栗本さんが見えました」
「通してやってくれ」
「はい」
秘書が恭しく社長の部屋への扉を開ける。
(うわ……)
社長の部屋から重苦しい空気が流れて来る。私が入る事を拒むような圧迫感だ。
「失礼します」
「おお、待っていたよ」
相変わらず福福しい笑顔。大会社の社長なのに威張ったり人を見下すような態度は全く示さない。それもそのはず、社長はとても信心深い。それが証拠に社長の部屋には神棚仏像御札に護符。ありとあらゆる神社仏閣の御札が所狭しと置かれている。
こりゃ神様同士ケンカしてる。だからこのテレビ局に変なモノが寄ってくるんだよ、と言ってやりたかったが私はまだ新入社員。とても言える身分ではない。
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