木目込人形

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「少しは慣れましたか?」 「はい、お陰様で。皆さんに親切にして頂いております」 「そうですか。それは良かった」  社長が座るように言ったので一礼してソファに腰を下ろした。革張りで適度なクッションのソファ。きっと有名ブランドのものだろう。そして私が座ったのを見計らったように秘書がコーヒーを持ってきてくれた。 「もう遅い時間なのでカフェインレスのコーヒーをご用意しました」  さすが大会社の社長秘書ともなると気がきく。態度は相変わらず悪いが。 「さて、栗本さんを呼んだのは他でもありませんが……」  社長はテーブルの下から小ぶりの段ボール箱を取り出しテーブルに置いた。 「これ、何とかして下さい」 「……何でしょうか」 「家に帰って開けて下さい。任せましたからね。じゃあ帰っていいですよ」  え! コーヒーくらい飲ませて下さいよ。せっかく淹れてもらったのに。 「お疲れ様でした。さあ」  秘書に急き立てられ私は社長室を追い出された。
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