1.それでも、あなたが好き。だから……

9/48
前へ
/211ページ
次へ
それから私は、急に熱を出して1週間学校に行けなかった。 それだけなのに、仲良しの友達からは、たくさんメールをもらった。 大丈夫? 早く学校においで。 こんなに優しい言葉をかけてもらえるなんて思わなかった。 嬉しかった。 だから、アイツと離れたことは私にとって正解だったのだと、思い込もうとした。 熱がようやく下がって、久しぶりに登校できた日。 アイツに絶対会わないように、すごく早い時間に起きて、家を出た。 そうすれば、アイツのことなんかもう忘れてしまえると思ったから。 それなのに……。 「琴莉!」 真上から、声が降ってきた。 聞いただけで、顔が真っ赤になってしまうくらい、大好きな声。 私が恐る恐る見上げると、2階の窓からアイツが顔を出して私を見ていた。 だけど、私は後悔した。 「よお!熱下がったのか?」 声はアイツだけど、あの人は知らない人。 髪型が、私がよく見るアイドルと似ていた。 私が見た事なかった、着崩した制服姿。 私以外の女の子と、楽しく遊んでいるんだな……とすぐ分かった。 「ちょっと待ってろ、いいな」 アイツはそう言うと、すぐに窓からいなくなった。 知らない……あんな人……。 私は、私が知らない人になったアイツと話すのが怖くて、学校に向かって全速力で走った。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加