1.それでも、あなたが好き。だから……

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私が入学できたのは、家から比較的遠い高校。 中学時代、いじめの影響で不登校になったこともあり、内申点が良くなかった私は、近所の公立高校にとって門前払いすべき存在だった。 一方で私も、家の周囲のコミュニティで生きていくことが嫌だった。 消えたくて仕方がなかった。これまで生きてきた、15年の思い出が蘇りやすい、この場所から。 だから私は「今度こそ不登校にならないから」と、約束もできない宣言で親を説得して、進路を自分の意思で選んだ。 電車に乗って1時間半以上。 部活動は文化系、運動系共に盛り上がっている。 そして決め手になったのは、不登校経験者への寛容さ。 学校見学の時に不登校だったことを打ち明けた私に対して、その時担当してくれた教師はこう言ってくれた。 「不登校は悪いことではないわ。行ってはいけなかった理由がある生徒さんは、実際たくさんいるの。無理して学校に行こうと思わなくて良い。私たちは、来たいと思ってもらえる学校を目指しているわ」 嬉しかった。 親ですら、1度は否定をした「学校へ行けない」という現象を、まるっと受け止めてくれる場所があることが。 部活も、本当はやってみたかったことがたくさんあった。 だけど、中学の時はそれすら叶わなかった。 学校見学の時に見かけた先輩たちは、みんなイキイキと輝いていた。 目が、キラキラしていた。 うらやましかった。めちゃくちゃ憧れた。 ここなら、私が本当になりたいと思える自分になれるかもしれないと、強く思った。 信じたかった。 今ならまだ間に合うと。 新しい自分になりたい。 過去の良い思い出を振り返らないと生きていけない自分からは卒業したい。 過去は振り返らない。 アイツのことは、もう忘れたい。 思い出すだけで、幸せな気持ちと辛い気持ちでぐっちゃぐちゃになる夜からは解放されたい。 そう思っていたはずなのに。 ねえ……どうして? なんでアイツが、私の入学式の会場に、先輩としているの?
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