296人が本棚に入れています
本棚に追加
「何?」
「私、ナオくんの側にいていいの?」
「違う。琴莉」
「何が違うの?」
「俺がいたいんだよ。琴莉の側に」
「でも私……変なんだよ」
「何が?」
変、の意味はわかっている。
ダメすぎる俺に、色々な人が教えてくれたから。
でも俺は、あえて琴莉の声を聞きたい。
「頭ぼんやりするし」
「うん」
「ずっと耳が変なの」
「うん」
「それに……忘れることも多くて……」
「うん…………」
「私、前の私じゃない。ナオくんと一緒にいた頃の私と違うんだよ」
俺は、どういう言葉が琴莉の不安を解消させられるのかを知らない。
それくらい、ずっとずっと離れてた。
だけど知らなくても。
想いを伝えることはできるから。
「琴莉。俺はいろんなものが変わったんだろ?お前が不安になるくらい」
「ナオくん……?」
「それでも、お前への想いだけは、変わらなかったんだ」
たった1つだけ。
俺が琴莉を諦めてあげれば、きっと俺も琴莉もこの先楽だったかもと、1度は考えた。
でも、そのたった1つが、何より嫌だった。
それ以外はどんなに変わったとしても、この想いは変わることはない。
「俺を信じてくれ、とは言わない」
言う資格なんかない。
「それでも、お前が信じても良いと思えるように、俺はもっと強くなるし、もっと変わる。ちゃんとお前のことを守れるようになるから……だから……」
琴莉の目から、次から次へと大粒の涙が溢れていた。
その涙を、今度は指じゃなくて唇で拭った。
「もう、俺から離れるな。琴莉」
琴莉が、微かに頷いたのを確認してから、俺は琴莉の唇にそっと自分の唇を重ねた。
琴莉は、俺の唇を受け止めてくれた。
初めてのキスの味は、ポテチよりずっとしょっぱかった。
最初のコメントを投稿しよう!