1.それでも、あなたが好き。だから……

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いつだろう。 琴莉以外の女子が俺の家の前に来るようになったのは。 よく覚えていない。 本当に、気がついたらそうなっていた。 友人たちからは、モテて羨ましいと言われたけど、俺にとってはのんきに笑ってなんかいられなかった。 女子たちの代わり、琴莉が俺に反応してくれなくなったから。 前までは、ちょっと呼ぶとすぐに 「ナオくん」 と笑って振り返ってくれたのに。 琴莉は、俺が呼んでも返事をしてくれなくなった。 それどころか、手を伸ばそうとすると、するりと逃げてしまうようになった。 あまりにもその変化が急で気になったから、まず俺は琴莉の母親に聞いてみた。 知らないと言われた。 次に俺は、クラスの女子の一人に聞いてみようと思った。 そいつは話がしやすいサバサバした女子で、男友達と同じくらい話しやすかったから。 放課後。 話しかけようとしたら、そいつが教室を出て行った。 胸騒ぎがして、おれはすぐに追いかけた。 そいつが向かったのは、琴莉がいる教室。 廊下から大声で 「佐川さーん!」 と、琴莉の苗字を満面の笑みで呼びかけていた。 いつの間に仲が良くなったんだ? 俺がそう、話しかけようとした時、そいつがもう1回琴莉に向かってこう言った。 「約束、守ってくれてありがとねー」 ……約束? そいつと琴莉が、いつどこでどんな約束をしたのだろうか? 俺は、そいつが琴莉の教室の前から、去って行くのを気付かれないように見送りながら、琴莉の様子を見たくて教室を覗き込んだ。 琴莉は俯いていて、表情は見えなかった。 その代わりに俺が知らない、琴莉の友人であろうやつらが、琴莉に触れていた。 その中には、男もいた。 琴莉をいじめていた男ではなかったが、その光景はきっとずっと忘れない。 それからすぐ。 琴莉にそいつらが何をしたのかを知ったのは。 たまたま、この時に俺の姿を見たというその男が、わざわざ俺の教室まで俺を訪ねてきたから。 それから言われた。 「琴莉ちゃんは、松井先輩のせいで上級生からいじめられたんだ。もう近寄らないで欲しい」 と。
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