1.それでも、あなたが好き。だから……

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「キャー!」 「ナオ様ステキー!!」 さっきまで、怖い鬼の顔をしていた女の子たちがまた、キラキラな目に戻る。 アイツの声には、そういう力があった。 聞いただけで、とろけてしまうような、そんな声。 まるで、魔法のようだと、私は思っていた。 って……いけない!しっかりしろ、私! これから、アレの前を通らないといけないのだから……。 まず、いつものように、しっかりとイヤホンをつける。 お気に入りの曲を流す。 いつもと同じルーチンの準備をしてから、私は勇気を出して歩き出した。 「あっ……」 「来たよ……」 女の子たちの、冷たい声がイヤホン越しに入ってくる。 でも、お気に入りの曲が、うま〜く消してくれるから、辛くない。 それから、あと一歩進んだらそっと、片耳だけイヤホンを外す。 「琴莉!おはよ」 アイツが、私に声をかけてくれるから。 名前を呼んでくれるから。 この、朝の時間だけ。 私は、こくりとうなずいてから、そっと立ち去り、イヤホンをもう1回つける。 それからすぐ、曲の音量を上げる。 そうすれば、後ろで誰が何と言おうと、私の心には届かない。 そうすることで、私は私を守りながら、アイツの声をアップデートすることができる。 それが私、佐川琴莉の朝のルーチン。 私のお気に入りの曲は、アイツのお気に入りの曲。 そして私は……アイツに片想いしてから、もうすぐ14年になる。
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