1.それでも、あなたが好き。だから……

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何でだよ。 そんな顔で、何で俺を見るんだよ……! 「お前が逃げるからだろ!」 頼むよ! 逃げるなよ!! 「意味わかんないよ!!!」 何でだよ。 わかるだろ? わかってくれよ! 会いたかったんだよ。 話したかったんだよ。 手を繋ぎたいんだよ。 「琴莉……!!」 俺が、もう一歩琴莉に近づこうと手を伸ばした時だった。 「ナオくんなんて大嫌い!!来ないで!!!」 は……? 琴莉? 今、何て……? 「こと……り……?」 嘘だよな。 俺のこと、大嫌いだなんて。 嘘だろ? 嘘だって、言ってくれよ……!! 「おい、琴莉、ちょっと待っ……」 琴莉は、俺に最後まで言葉をもう言わせてくれなかった。 近づくな、と目で訴えてきた。 それから、また琴莉は走り出した。 「待てよ……なあ……琴莉……!!」 走らなければ。 捕まえなければ。 俺は、焦った。 でも、どうしたらいいかわからない。 琴莉に大嫌いと言われてしまったから。 くるり、と琴莉が振り返った。 俺の方を見てくれた。 やっぱり、琴莉が大嫌いだなんて言ったのは嘘だったんだろう。 「琴莉……俺……」 また一歩、俺が近づこうとした時だった。 琴莉の向こう側に、アイツがいた。 「琴莉ちゃんは、先輩と離れた方が楽しいって言ってますよ」 と、俺に言いやがった、琴莉に付き纏っている男。 まだ、琴莉ちゃんに付き纏っているんですか? そう言いたげな視線にムカついた俺は、アイツに睨み返した。 けれど、すぐにそれが失敗だったことに気づく。 琴莉の表情が、また変わった。 怯えていた。 しまった……! 「待て!琴莉!!!」 と俺が叫んだ頃には遅く、琴莉はあっという間に俺の前から姿を消していた。 ……俺の声は、届かなかった。
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