1.それでも、あなたが好き。だから……

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ある日、俺はあまりにも耐えきれなくなったので、たった1人にだけ琴莉のことを打ち明けた。 そいつは、俺が通っているスクールで最初に仲良くなった親友。 日本の文化も、アメリカの文化もわかるそいつがいなければ、きっと最後まで俺は独りだっただろう。 だからこそ、恥を晒すことになってもそいつには話したかった。 聞きたかった。 俺は、一体どうすれば良かったのか、を。 俺と琴莉の今までの話を全て聞いてくれたそいつは、まずこう言った。 「お前は、どうしたかったんだ?」 俺は即答した。 「俺が、琴莉を守りたかった」 と。 「じゃあ、成功してるんじゃないのか?」 そう、そいつは言った。 「どうしてそう思うんだ」 俺は、何故かそいつの言葉にイライラした。 俺の話のどこから、そういう答えが出てくるのか、分からなかった。 「そう怒るなよ」 「怒ってない」 「いーや、怒ってるね」 そう言いながら、そいつは俺の額に人差し指をつけた。 「頭の中の誰に、お前は怒っているんだ?」 そいつは、決して笑いもせずに、真顔でそう尋ねてきた。 そいつがそういう言い方をするときは、大体俺を見抜いている時。 そういう不思議な力が、そいつにはあった。 俺は、深呼吸をしてから、考えてみた。 怒っている。 胸がムカムカする。 考えただけでも吐きそうになる。 何故だ。 誰に対して、そんな感情を持っている? そいつはもう1回言う。 「ナオ。ここはアメリカだぞ」 「だから何だ」 「お前は、縛られなくて良いんだぞ、分かってるよな」 「……分かってる」 「いいや、分かってないね。お前、怖いんだろ?」 「何が」 「自分のせいで、かわいいバードちゃんが泣くのを見るのが」 痛いところをついてくる。 「何度も言うが、ここはアメリカだ。お前とバードちゃんのことは誰も知らないし、そもそもお前なんかに誰も興味は持たないよ。まずはその自意識過剰をどうにかしろよ」 「自意識過剰?」 その言い回しに、俺はまたムカついた。 今度は、真剣に俺の話を聞いてくれているはずのそいつに対して。 「俺のどこが、自意識過剰だって?」 俺が聞くと、そいつは鼻で笑いながらこう言った。 「だってお前、自分さえ我慢すればバードちゃんが幸せになれるとか、本気で思ってたんだろ」 「ああ」 だから耐えたんだ。 会いたくて仕方がない時も、その時さえ耐えれば、また2人で元通りになれると思ったんだ。 「それだよ」 「は?」 「お前、本気で分かってないの?」 「何が……」 「お前がそんなことをうじうじ考えている間、バードちゃんがお前のおかげで幸せになれたと思うのか?」
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