1.それでも、あなたが好き。だから……

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全くない、とは言わない。 実際俺も、やられたことはある。 日本人というだけで。 でも、今はなくなったのだ。 「急に、そんな頭の色なんかにして……」 母親は、俺の髪を苦々しく見ながら吐き捨てた。 ちなみに、この髪の色にした時、父親は 「まあ、アメリカだしな」 とよくわからない理由で納得をしてくれたが、母親から思いっきり泣かれてしまったのは、記憶に新しい。 「俺は、大丈夫」 「本当に?」 「しつこい」 「でもあなた、その髪の色にする前、随分と塞ぎ込んでたから、何かあったんじゃないかって心配だったの」 「…………」 言えない。 まさか琴莉と別れた日のことをいまだに引き摺っていたからだなんて。 英語の勉強という名目で、恋愛ドラマを片っ端から見まくっている母親にでも知られたら、何を根掘り葉掘り聞かれるかわかったもんじゃない。 ただでさえ今、何もない状態でもこれでもか、と掘られているのだから。
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