2.バレンタインの悲劇

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私の教室から放送室までは一本道。 1階の東の端にある放送室から、職員室を通り過ぎ、玄関前に広がるスペースをまっすぐ突き進むと、1年生の教室がずらりと並んでいる。 だから、初めてとは言え、行く時は楽だった。 授業終わってすぐということもあり、玄関前に人がほとんどいなかったから、道が分かりやすかったというのもあったのだが。 問題はその帰り。 私は知らなかった。 その玄関前のスペースが、お昼休みには売店のようなものができたりと、学校中の生徒が集まりやすい場所であるということを。 スペースの中心では、明らかにスクールカーストの上位集団とわかる、華やかな集団がたむろっていた。 その光景に私は見覚えがある。 嫌な予感しかなかった。 そしてそういうものは、必ず当たるのだと……私はもう知っている。 「ナオくん!」 「ナオトー!!!」 「ねえねえ、今日こそ私とデートしようよ」 「やだ、私の方が先なのよ!」 鶏の鳴き声よりずっと耳障りな、甲高い雌の声。 その合間から聞こえてくるのは 「ったく……どいつもこいつも、しょうがねえな……」 ずっと昔から知っている声。 決して、さっきまでいた人たちのような、トレーニングをされた、届けるための声ではないけれど。 「1人ずつ、順番な」 そう言って、女の子たちの頭に軽く頭をぽんぽんと叩きながら、私の方を見る金髪の男……アイツと、私は目が合ってしまった。 どうして。 なんで、こんなところにいるの? なんで、あなたのそんな姿を、私に見せるの? 見せびらかすの? 楽しいはずの気持ちが、一気にどん底まで落とされた気がした。
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