2.バレンタインの悲劇

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最初は、てっきりただ曲名だけを送ってくる人が多いのかな、と思った。 でも……そうじゃなかった。 音楽のリクエストを受け付けてから、私はたくさんの曲と、その曲に託されたたくさんの想いに触れることができた。 例えば。 小さい頃に見ていたアニメの主題歌を教えてくれる人は、こんなコメントを書いてくれた。 聞くだけで当時のワクワク感をみんなと共有したいから、と。 親が大ファンだというアーティストの曲を教えてくれる人は、こんなコメントを書いてくれた。 親と初めて行ったコンサートの感動がすごかったから、とにかく誰でもいいから感動してほしい、と。 もちろん、歌詞が好き、曲がかっこいと言う理由の人もいた。 音楽を好きな理由は、人の数だけ存在する。 そこから見えてきたのは、その人がどういうものに興味があるのかだったり、その人の裏にある物語の一部であること。 そんな発見をするのが、私は少しずつ楽しくなった。 新しい人のことを知るのが、少しずつ面白いと思うようになった。 だけどそれ以上に、放送部が私にくれたのは、そんな新しい気づきだけではなかった。 夏、立川先輩が放送コンクールに出ることになり、私は何故か立川先輩にこんなことを頼まれた。 「君の耳を貸してほしい」 と。
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