2.バレンタインの悲劇

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「あー松井くん、お盛んだねぇ」 一緒にメールを読んでいた田村先輩が、呆れたような声を出した。 私が知っている限り、ほとんどの女の子がナオ呼びしていたから、田村先輩のような美人な人がアイツを苗字呼びしているのが、とても新鮮だった。 「松井ガールズ、廊下を我が物顔で占領してて、ほんっと迷惑」 「ま、松井ガールズ……ですか??」 「そ、松井くんにベタベタアメーバのようにまとわりつく、頭の弱い子達のこと。私たちの間ではそう呼んでるのよ」 田村先輩の表情から、そのガールズ達がいかに先輩にとって迷惑な存在であるかが、ヒシヒシと読み取れた。 「あーもう、人前でベタベタイチャイチャ……松井くん、一体どういう神経してるのかしら」 「は、はあ……」 耳をできれば塞ぎたかった。 でも、田村先輩は知らない。 私とアイツの繋がりを。 だから、知らないフリをして、田村先輩の話を聞いていたが……。 「この間もさ松井くん、女2人を抱えてホテルに行ったらしいの」 「そんなこと、できるんですか?」 ラブホだとしたら、18歳未満は利用できない。 アイツはまだ17歳だ。 「それが、行ったホテルって、あの高級ホテルだったみたいなの。きっと、 女どもに貢がせてるか、いかがわしい仕事をしているに違いないわ」 それからも、田村先輩は立川先輩が来るまで、延々と、松井波音がいかに女狂いで遊び歩いている存在であるかを、私に教えてくれた。 田村先輩は知らないから。 目の前の人間が、一体どんな思いで松井波音と言う存在を、必死に忘れたがっていると言うことを。 アイツが私以外の女の人を抱いているかもしれないと言う情報が、どれだけ私の心を抉るのかを。
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