2.バレンタインの悲劇

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「君が、今誰を好きでもいいし、僕のことを彼氏と見られなくても今はいい。僕も卒業までは君を後輩として扱う。でも、僕の卒業式の日にもう1度告白させて欲しい」 「それって……」 「その時に、僕の気持ちを受け入れてくれたら……嬉しい……」 そう言って、この日は立川先輩も私を放送室に残して、教室へと帰っていった。 全国の女子を虜にしたイケメンボイスに、少女漫画に出てきそうなセリフを言われたのだ。 どきどきはした。 心臓の音が、太鼓のように響く。 それに、生まれて初めての告白だ。 しかも、私のような……地味で、誰にも気づいてもらえないような容姿の人間に。 嬉しくない、と言えば嘘になる。 ありがたい、と思った。 立川先輩のことは尊敬しているし、この人のようになりたくて、今私は練習を積み重ねているのだから。 私なんかを想ってくれる人がいるなら、その人の想いに応えたいと思うのは、人間として普通の感情じゃないかと、想った。 卒業式なんか待たずに、今からでも付き合いませんか?と言ってしまっても良かった。 そのはずなのに。 立川先輩は分かっていたのだろう。 今私の心にいる人が、どれだけの割合を占めているのか。 だって、こんなにもときめく展開があっても、私が今1番に考えているのは……。 「どうしてアイツじゃないんだろう」 だったから。
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