2.バレンタインの悲劇

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母親に、アイツの母親からアイツのラインを教えてもらうようにお願いしてもらった。 「どうして自分で聞かなかったの?いつでも聞けるでしょう」 と母親には言われたけれど、私は適当に理由を誤魔化した。 不思議がっていた母親がアイツの連絡先を私に教えてくれたのは、バレンタインになる直前……2月13日の夜10時くらいだった。 私は母親にお礼も言わず、急いで部屋のベッドに潜り込みながら、アイツの名前が表示されているラインのトーク画面を何度も確認した。 それから、何度も、文字を打っては消して、消しては打った。 それを、10回ほど繰り返し、ようやく勇気を出してラインを送ることができたのは、すでにバレンタイン当日を迎えていた。 「佐川琴莉です。放課後、あの公園で待ってます。渡したいものがあります。絶対に来てください」 絶対にと言う言葉を、私は使いたくなかった。 使えば使うほど、重荷を背負わせ、逃げられる気がしたから。 だけど、今日だけは、絶対に来て欲しかった。 これは、私にとって、アイツに贈る最初で最後のバレンタインだから。 過去と決別するために。 そして、アイツへのこれまでの感謝を伝えるために。 好きだった。 ありがとう。 これからは、別の道で頑張るね。 だから、もう義務をこなさなくてもいい。 そう、言うつもりだった。 でもアイツに会ってしまったら言うべきことが吹っ飛んでしまいそうな気がしたので、私はお気に入りの可愛い付箋に、言いたいことをメモしてカバンにしまった。 きっと、明日のこの時間は今と違う気持ちになっているのかもしれない。 ないているだろうか? それとも、笑っているだろうか? そんなことを考えながら、私は眠れない夜を過ごした。 まさか、このベッドに次に戻ってくるのが半年以上も先になるなんて、夢にも思わなかった。
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