2.バレンタインの悲劇

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バレンタインデーの放課後。 みんなが浮き足立っている。 私は、息ができないくらい、緊張していた。 私は立川先輩に 「体調不良で休みます」 とラインを打ちながら、そっとアイツとのトーク画面を見る。 既読がついている。 今朝のことだ。 そして、この時間まで、返信がなかった。 それが答えなのだろうかと、自分の中で納得しそうになった。 だけどもし認めてしまえば、公園で待ち続ける勇気はきっと持てないだろうと思った。 だから、返信がなかったのは忙しかったからと、脳内のアイツに、私が好きな声で喋らせながら、公園へと向かった。 最初は、ベンチで待った。 5時、6時になって、公園で遊んでいる子どもたちが帰り始めた。 代わりに制服姿のカップルが、手を繋いで現れ、ブランコを漕ぎ始めた。 私はそれを見ながら、ふとこんなことを考えてしまった。 自分とアイツも、かつてあんな風に一緒に遊んでいた。 もしあのまま、今の私とアイツになることができたら、あんな風になれたんだろうか。 どちらかが何かを話す度に、大声で笑い合える、そんな2人に。 でも、なれなかった。 だから、こうして私は今1人でいる。 来てくれとお願いをしても、来てくれるかわからない……そんな、ちょっとした衝撃で壊れてしまうような、そんな関係にしか、なれなかった私たち。 ふと、スマホの時計を見るとあっという間に8時になっていた。 まだ、アイツの姿もないし、返事もない。 目の前のカップルも、消えていた。 私は、カバンから渡せたら、と願ったチョコレートを取り出した。 精一杯の気持ちで作った。 カードも、書いてみた。 きっと、言葉だけじゃ伝えきれないと思ったから。 でも、もう、いいや。 これが、アイツの答え。 私の、アイツとの物語の終着点。 「帰らなきゃ」 歩きながら、このチョコを食べよう。 そして、書いたカードをビリビリに破いて、どこかに捨ててしまおう。 伝えて振られてしまうより、ずっと私らしいアイツへのケリのつけ方ではないか。 そう思いながら、公園を出た直後。 激しいクラクションの音と、前が眩しいほどのライトに照らされた。 それから私の世界は、無になった。
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