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その時俺がいたのは、駅前にある小さなクラブ。
決して興味もない音楽を大音量で聞かされながら、途切れもせずにペチャクチャとしゃべりかけてくる女子たちの相手をしていたせいか、精神が摩耗していた。
1度外に出て、静かな裏道に入ってから電話を掛け直したのだが、先ほどまでの耳障りな音が頭に残っている状態だったので、ひどく頭痛がしていた中での、琴莉の事故の知らせだ。
世界が、俺の周りだけ反転したのかと思った。
ぐにゃりと視界が歪み、俺は地面に膝をついてしまう。
どうにか、息を吸って、吐いてをするので、精一杯。
「母さん…………どこの病院か、分かる？」
俺の質問の意図に、母親はすぐに気づいたのだろう。
「あんたが行ったところで、何もできないでしょう？やめておきなさい」
と言われた。
でも、俺の中にはこのまま何もせずに、あの煩い場所に戻るという選択肢はとっくに消えていた。
勿論、このまま家に戻るという選択肢も、だ。
「母さん、教えてくれ」
俺は、何度もしつこく頼み込むと、ようやく母親は重い口を開いて病院の名前を教えてくれた。
自分がいる場所から、走れば10分程で着く距離にある総合病院だった。
俺と琴莉は、その病院で生まれたと、以前母親に聞いたことがあったので覚えていた。
「ありがとう母さん」
そう言って、通話を切ろうとした時だった。
「ナオ、まさか本当に行く気じゃないでしょうね」
という、母親の声が飛んできた。
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