2.バレンタインの悲劇

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俺が座ったのを確認してから、琴莉の父親も横に座った。 俺との間に、一人分は座れる距離だったから、それこそが琴莉の父親の本心であることに、俺は気づいた。 それから、琴莉の父親はしばらく何も話さず、膝の上に手を置いていた。 俺は、その手を見ながら、次の言葉を待つしかできない。 たったそれだけの時間が、ひどく長いように感じた。 琴莉の父親がふっと息を漏らす。 その音が聞こえたのが次の合図。 「波音君。君に聞きたいことがある」 そう言うと、琴莉の父親は俺に2枚の紙を手渡してきた。 どちらも、ボロボロになっていて、赤黒い血で染まっていた。 誰の血であるかは、明白だった。 その紙を受け取る俺の手は、まるで痺れたかのように細かく震えた。 「これを、君はどう思う?」 琴莉の父親は、俺にその紙の中身を読むことを強制する質問を投げかけてきた。 一体何が書いてあるのか、と考えることすら許されない。 そう思った俺は、怖さを抱えながら、その紙に書かれている文字を確認した。 そこには、俺がずっと欲しかった言葉もあった。 でも、同時に受け入れ難い言葉もあった。 できれば、もっと早く、こんな形ではなく受け止めたかった言葉達。
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