2.バレンタインの悲劇

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 来てくれたら、まずは来てくれてありがとうと言う。 あとは、他の女の子との時間を邪魔してごめんね、と謝る。 もう2度と、こういうことはしないからと前置きをしてから、話を聞いてほしいとお願いをする。 OKがもらえたら、まずはチョコレートを渡そう。 初めて作った、とかは重すぎるから言わない。 お父さんに作った余りだと言えば、大丈夫だろう。 受け取ったのを確認してから、好きにしてもいいから、いやなら捨てちゃっていいよと言う。 私から言ってしまえば、もし本当に捨てられても傷つくことはないだろう。 その後で、実はね、と話を切り出す。 軽い口調で、好きだったよ、と言おう。 せっかくチョコを作ったんだから、今までの気持ちも伝えてみようと思ったんだって言おう。 返事は、ちゃんと貰わないといけない。 嫌いだよと言われることも怖いし、気持ち悪いと言われることも怖い。 だけど、言われて、振られることが目的だ。 だから、逃げるな私。 言われたら、こう言えばいい。 わかってたよ、これが最初で最後だから、気にしないで、と。 それで終わりにする。 もし、面倒だと言われたら、何もせずに終わりにする。 チョコレートも渡さない。 これも、目的は果たしてる。 こっぴどく振られて、次に進むという目的。 緊張する。 でも、全部やり遂げなきゃ。 これが終われば、好きという気持ちはきっといなくなってくれるだろう。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 可愛いメモ用紙に書かれた殴り書きのメモは、全部血に染まっていた。 けれど全部読めてしまった。 琴莉が、本当は俺を好きでいてくれたけど。 だけど、俺を諦めることを決めていたということ。 残酷だ、と思った。
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