2.バレンタインの悲劇

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琴莉の父親は、そう言うと俺の前にスマホを見せてきた。 液晶画面がひび割れているが、かろうじて操作ができる、血がべっとりとついているスマホ。 可愛らしい、小鳥の絵が描かれているスマホカバーから見ても、持ち主は一目瞭然だった どれだけ琴莉が痛い思いをしたのかは、そのスマホが教えてくれた。 「君は何故、琴莉に返信をしてやってくれなかったんだ?」 琴莉の父親は、そう言いながら琴莉のスマホのライン画面を開いた。 そこにはこう書かれていた。 「佐川琴莉です。放課後、あの公園で待ってます。渡したいものがあります。絶対に来てください」 俺は、送信時間を確認してから、急いで自分のスマホを確認する。 何回、何十回と見比べて見ても、見える結果は一緒。 俺は、琴莉からのメッセージを受け取ってはいかなかった。 琴莉の画面は既読になっているにも関わらず。 「行かないなら、一言君が行かないとさえ言ってくれれば、琴莉はこんな目に遭わなかったかもしれない。そう思うとね……君を恨むのは筋違いだと分かっているが……」 何故俺の母親が、俺がここにくることを止めたのか。 何故琴莉の母親が、俺に敵意剥き出しだったのか。 全部がつながった。 琴莉の事故は、俺が琴莉が待っている場所に行かなかったから起きたことだと、全員が思っていた。 もしかすると、琴莉もそう思っているのかもしれない。 俺には何一つ心当たりがないと言うのに。
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