2.バレンタインの悲劇

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そもそも、俺は4月に琴莉と再会をした時は、こんなに琴莉と離れているはずじゃなかった。 頭の中で、あらゆるシミュレーションをした。 「元気か?」 「大変そうだな、手伝うよ」 「学校には慣れたか?」 「寄り道の穴場、教えてやるよ」 などなど、何かにつけて琴莉に話しかけようと思い、メモ帳に簡易シナリオをいくつも作っていた程だった。 他の人とは気軽に話せる。 勝手に話しかけてくれて、自分は相槌を打つだけだから。 それはとても楽だ。 脳を使わなくていいから。 でも琴莉に対してはそうはいかない。 分かっていたけれど、琴莉から俺に話しかけるということは一切ない。 寂しいと思ったけれど、仕方がないとも思った。 だからこそ、ここから琴莉と俺の関係性を新しく築いていけばいい。 そう思っていたのに、俺は大きな計算違いをしていた。 自分が琴莉に執着するように、俺に執着する人間が0ではなかったことに、どうして俺はこのタイミングまで気づけなかったのだろう。
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