0人が本棚に入れています
本棚に追加
この5年で、直哉は周囲が驚く程に成長していた。高身長でスレンダーな母親の血を濃く受けて、細い体に長い手足がすらりとしている。
逆光を受けると、シルエットがまるで空に首を伸ばしたニチリンソウのようで、とても6歳には見えなかった。
引き換え、兄の大海は横に伸びたものの縦には伸びなかった。5年前とさほど変わっておらず、小さくてムッチリしてて、ずんぐりむっくりな父親にますますそっくりになっている。
兄はああなのに。父はこうなのに。
直哉はこういう時、自分が何か悪い事をして、みんなによってたかって責められているような、そんな気持ちに陥った。
叔父や叔母が、何かおかしな異物を見る目で自分を見ている気がして。そんな時は居心地の悪さに、大きな身を竦めて出来るだけ小さくなろうとした。
それでも、直哉の心を一番傷付けたのは、父親の温かく柔らかい笑顔なのだった。
大海が自分似だと他人に言われた時に見せる父の顔。照れながらも、隠しきれない喜びと息子への愛情が顔中に溢れているのを、直哉は何度も見た。
かけっこでどれだけ早く走っても、どれだけたくさんの漢字を覚えても。きっと何をしても、自分には父をあんな笑顔にはさせてあげられない。
兄が羨ましくて。寂しくて。そして何だか自分が恥ずかしくて。胸の奥がちりりと熱を持って痛んだのを必死に隠した。
最初のコメントを投稿しよう!