お店にて

1/1
前へ
/6ページ
次へ

お店にて

「う~ん本当にどうしよう……迷うなぁ……」 次の日の夜。その日バイトが早く終わった私は、お店の中にあるバレンタインコーナーで、う~んう~んと頭を悩ませていた。 たくさんの種類や形のあるチョコレートを目の前にして頭を抱える。 ちなみにだけど、沙奈や江梨、真理や職場の人にあげるチョコレートはもう購入済みだが、私はある人に渡すチョコレートで悩んでいた。 その人は、私が高校の時からずっと好きだった人だ。 私より六つ離れていて、現在33歳。カッコよくて仕事も真面目な素敵な男性だ。その人の名前は、有末翔太(ありすえしょうた)さんだ。 「あぁ、もう‼本当にどうしたらいいの⁉」 ガシガシと頭を掻きながらそう呟いていると、 「あら?加絵じゃない?」 私を呼ぶ声が聞こえた。慌てて声のした方を見ると、パパのお姉さん、美和(みわ)おばさんが私に手を振っていた。 「あっ、美和おばさん。こんばんは」 「加絵、こんばんは。何々?バレンタインコーナーでチョコなんて選んじゃって……もしかして、彼氏にでもあげるのかしら?」 「ちっ、違いますよ‼好きな人にあげるんです‼」 気が付けばそんなことを口走っていた。 「ふ~ん。こんなにたくさんチョコ買って~。加絵はこんなにも好きな人がいるのね」 「これは、友達にあげる友チョコ専用です‼」 きっぱりとそう言い切るとおばさんはニヤニヤし、 「そうなの。まぁ頑張りなさい‼じゃあまたね」 言いたいことだけ言って去って行った。 「もう、おばさんは……自分が言いたいことだけ言って去って行くし……」 はぁっとため息をつきながら再びチョコレート探しに戻る。 しかし、これと言ってピンッと来るものはなかった……
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加