未だに見る悪夢

2/2
前へ
/48ページ
次へ
 はっと目を覚ますと、いつもの見慣れた天井が広がっていた。また、あの夢か。大事なことが控えている時に必ず見る、あの日の悪夢。中学一年生の頃、サッカー部のレギュラーになった僕は、三年生の先輩から暴力を受けた。当時、父親の職場の社宅に住んでいたけれど、事件をきっかけに引っ越しをして、この街に移り住んだ。  それからだ。僕がこんなに無口で無愛想な人間になったのは。  翌日は、希望する大学の入試。将来は、獣医になりたくて、獣医学部のある大学を受験した。心に深い傷を受けた僕が、家族以外で心を開ける相手は動物だった。転入先では、みんな僕に優しく接してくれた。本来の自分はもう死んでいて、無口で無愛想な自分だったけれど。人から受けた優しさを動物に返すことしかできないから、獣医になってたくさんの動物を助けてあげたい。そう思って志した。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加