新しい環境

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新しい環境

 希望する大学の獣医学部は不合格だったけれど、なんとか別の大学に合格をした。そこは自宅からは通えない、少し田舎にある大学だった。でも、学生寮が完備されているから、そこでひとり暮らしをすることに決まった。親元を離れて、初めてのひとり暮らし。そろそろ親元を離れたいと思っていた僕には、ちょうど良い機会だと思った。不安は、なかった。  引っ越しは、兄貴が手伝ってくれた。大した荷物もなく、兄貴の車に積みこめば充分だった。しきりに母親が『一緒に行こうか?』と言っていたが、その都度、丁重に断った。 「大知(だいち)、気をつけてね。何かあったらいつでも戻ってくるのよ!」  母親が不安げに僕を見ていた。適当に「はいはい」と答えると、車は出発した。  
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