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「今日はこれで解散! 大知と理沙は残って!」
部長からいきなり呼び捨てにされた。優作さんのことも呼び捨てにしているんだから、そういう人なんだと思った。
「じゃあ、あとはよろしくね、部長!」
優作さんが言うと、亀岡さんは軽く会釈をした。船井さんはもうすでに姿がなかった。部長が軽く手をあげたのを確認してから、ふたりは出ていった。
「馬術部の活動は、朝六時半から十時。その日の天候などで変更もあるけれど。基本的に月曜日はおやすみです」
朝六時半? どうしてそんなに早い時間から? そう思ったのは理沙も同じようで、ふたりで顔を見合わせた。
「本当は、三年、四年、五年、六年にそれぞれひとりずつ部員がいるんだけれど。所謂、幽霊部員。実質は私たち四人に馬が五頭で大変だったんだぁ」
「ぜひ、馬を見てみたいんですが」
「いいよ! 行こっ!」
馬を見たがる理沙に、部長が微笑みかけた。そして、三人で厩舎へと向かった。
「こっちから、ウメ、タラコ、コンブ、オカカ、ゴマシオ」
五頭の馬たちには、おにぎりの具みたいな名前がついていた。ゴマシオは白い馬体に黒の斑模様があるから、わからないでもない。
「かわいい! 触ってもいいですか?」
「いいよ。鼻面をこうやってね。大知も触ってみる?」
「……はぁ……」
恐る恐る触れようとしたら、耳がピクンと動いた。
「あら~? ゴマシオも男なんだねぇ。理沙はいいのに、大知は嫌だって」
この耳は、どうやら怒っているということらしい。
「今日は、これくらいにしておいて。明日から、さっそく六時半に部室集合だからね。変更などは入部届に書いてもらったメアドに連絡します」
「はい。よろしくお願いします」
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