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どこを見回しても真っ白だった。
吹き荒ぶ風で巻き上げられた雪、視界は完全にホワイトアウト状態だ。
どれぐらいここにいるのだろうか?
時折遠のく意識と闘いながら、ポケットの中の電話に手を伸ばして止めた。
充電残20パーセント、電波のない場所だから、立ち上げる度にバッテリーが減っていくだろう。
参ったな、他に持ってるものといえば、財布と……。
ニャンチュール、猫まっしぐらのあのオヤツぐらいだ。
食うか? いざとなったら食うしかないか、ニャンチュール。
悪いな、風太、また新しいの買いに行ってやっから。
つうか、ギリギリまでは人間としての尊厳を保ちたい、これは猫のオヤツだぞ、と首を振った。
大体、なんでこうなったかっつうと、風太のせいだぞ?
今頃、家のコタツでヌクヌクしているだろう、ふてぶてしい顔をしたハチワレ猫の風太を思い出す。
夕方になってから、母ちゃんが言い出したんだ。
「ねえ、虎太郎。悪いんだけど、風ちゃんのニャンチュール切らしちゃったのよね、買ってきてくれない?」
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