りんごとレモン

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「いいか、俺はお前の兄ちゃんだ。兄ちゃんには弟を守る義務がある。その為に、お前より早く生まれてきたんだ」 「はい。兄ちゃんは立派な人です」 「俺はな、お前には真っ当な中学生活を送って欲しいと思ってる。俺と違ってお前は頭も良い。顔も俺に負けるがなかなか良い」 「運動神経はありませんけどね」 「とにかくだ。俺みたいに変にグレたりして欲しくねえ。不良なんてぜってぇダメだ。お前には、そこら辺の奴みたいに平和な中学生活を送って欲しい。部活をしたり、仲の良い友達を作ったり、恋愛をしたりな。これは、兄ちゃんとの約束だ。死んでも守るんだぞ」 「はい、もちろんです。庸平兄ちゃん」 ぼくは少し考え事をしてから、兄ちゃんの差し出した小指に、右手の小指を繋ぎました。それから数回上下に振って、儚く繋いだ指と指を離します。 「よし、カッコよくなったな。じゃ、明日のテスト頑張れよ。蘭太」 最後にぽん、と頭を叩いてから、兄ちゃんはリビングに戻って行きました。ドラマの名場面はもう終わってしまったみたいで、「あっ!」と若干怒りの混ざった声が聞こえて、ぼくは急いで2階に上がって自室に戻りました。
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