りんごとレモン

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サラサラになった髪の毛と、名残惜しい庸平兄ちゃんの手の感覚を胸に、ベッドへ飛び込みます。 「……」 庸平兄ちゃんは、とっても優しい人です。 好きな食べ物はレモン。ちなみにぼくは、りんごです。 高校2年生なのに、学校に行かずにぶらぶらしています。バイクが趣味だと言っていましたが、見せてくれません。 そして、庸平兄ちゃんはぼくの為ならいつでも、何だってしてくれます。魚を捌いてと言えば、半日かけて捌いてくれますし、ぼくが変な人に絡まれた時には、一瞬で薙ぎ倒してくれました。 だから、庸平兄ちゃんの為に、ぼくも良い子であろうと頑張ろうと思いました。 庸平兄ちゃんの言うことなら、ぼくも何だってするし、約束だって守ります。 その全てが、この平和な日常に繋がるのなら、ぼくはずっと、この幸せな時間を感じていたいので、そうしようと思っています。 ──でも。 『お前には、そこら辺の奴みたいに平和な中学生活を送って欲しい。部活をしたり、仲の良い友達を作ったり、恋愛をしたりな。これは、兄ちゃんとの約束だ。死んでも守るんだぞ」 兄ちゃんは、ぼくにそう約束しました。
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