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『そんな顔しないで。同情なんていらないわ。わたし、とっても幸せだったから』
――そう言いながらも、今にも泣き出しそうなミシェルの声。
『本当に幸せだったのよ。お父さまもお母さまも、使用人もみんな優しくして。外にはでられなかったけど、調子のいいときは料理人もメイドも庭師も呼んで、庭でお茶会を開いたわ。……マリーも、わたしとたくさんたくさん遊んでくれた』
「マリー?」
『……屋敷ではたらくメイドの子でね、まだ四歳だった。わたしには兄妹がいなかったから、あの子が唯一の遊び相手だったの。いつもわたしの後ろにくっついて……何をするにも一緒で……笑顔がほんとうにかわいい子だった……』
「……それ……って」
――ああ、しまった。とエヴァンは思った。
まだ四歳だった……その過去形な言い方に、彼は自分が決して触れてはならないことに触れてしまったと理解した。
悲しみに堪えるように震える小さなミシェルの身体が、その言葉の意味を表していた。
部屋の空気が一変する。彼女のオーラが変質する。今まで光に溢れていた部屋が――本来の姿を取り戻す。
炎で焼け焦げた、仄暗い現場へと――。
「……ミシェル、君……」
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