7.それぞれの目的

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 ――馬車が動き出す。  結局この日、エヴァンについて自分がどうするべきか――という点において明確な結論が出ることはなかった。  けれど収穫がゼロだったわけではない。  少なくとも、アナベルは悟ったのだ。  まだ一度たりとエヴァンに「自分の気持ちを伝えていない」ことを。  エヴァンに自分の気持ちが伝わっていないとは思っていない。エヴァンが自分よりアメリアを大切に想っている――それが間違いだとも思っていない。  けれど、きっとそれが全てではない。まだ自分の知らない何かがあるはずなのだ。  エヴァンがアメリアをどう思っているのか、エヴァンが自分のことをどう考えているのか。  ――アナベルは馬車に揺られながら、ゆっくりと目を閉じる。  伏せた瞼の裏に、エヴァンの笑顔を思い浮かべながら……。  懐かしいエヴァンの笑顔。もう何年も見ていない、屈託のない彼の笑顔。  木々の隙間からこぼれる春の日の光のような、温かくて……優しい笑顔。  そんな彼の顔を最後に見たのはいつだっただろうか。いつからエヴァンは笑わなくなったのだろうか。  もしもそこに理由があるとしたら、それは一体どうして……? と。  ――それがわかれば……もしかしたら……。  彼女は瞼を伏せたまま物思いにふける。  そうしていつしか、束の間の夢の中へと落ちていった。
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