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8.幼き日の記憶:すべての始まり
それはまだアナベルが四つか五つの頃のこと。
幼い彼女がエヴァンに恋心を抱くようになったのは、きっとこの日の事件がきっかけだった。
*
「おにーさま! エヴァンが来てるんでしょう?! わたしもいっしょに――」
その日もアナベルは、エヴァンが遊びに来ていることを聞きつけ兄サミュエルの部屋を訪れた。
その頃の彼女はまだほとんどを屋敷の中で過ごすような年齢で、つまり友達と呼べるような間柄の相手はいなかった。
だからもっぱら彼女の遊び相手と言えば兄のサミュエルと、その友人であるエヴァンの二人だけ。つまりそんな二人に、幼い彼女が懐くのは当然のことだった。
――そう言うわけで、その日もエヴァンの来訪を知ったアナベルは急いで兄の部屋へと走り……そしていつもそうしているように、返事も待たずに部屋の中を覗きこんだ……のだけれど。
「……?!」
そこにあったのはいつもと様子の違う言い争いをする二人の姿で、彼女はその予想していなかった光景にその場で思わず立ち竦んでしまったのだ。
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