8.幼き日の記憶:すべての始まり

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「――ッ」 「……!?」  すると今度こそ我に返った様子でお互い距離を取り合う二人。そうして彼らは自らの服の埃をパッパと払うと、何かを取り繕うように彼女の方へと駆け寄ってきた。 「け、喧嘩なんて……してないよな!? エヴァン」 「あっ……ああ、ちょっと遊んでただけだよ。大丈夫、僕らは喧嘩なんてしてない。だから泣かないで、アナ」  二人はそんなことを言いながら、どういうわけかドアの外の様子を伺う。そうしてそこに誰もいないことを確認すると、安堵したような顔で扉を閉めてアナベルに向き直った。  そうして、傷だらけの顔に無理やり笑みを浮かべる。 「ほんとに喧嘩なんてしてないから」 「そうだよ、アナが気にするようなことなんて何もないからね」  けれど、幼い彼女にだってそれが嘘だと言うことくらいわかった。  それに、なんとなく悟ってしまった。二人が何か隠していることを。  だから彼女は、二人に疑わしい視線を向ける。 「おにいさま、うそついちゃいけないのよ」 「――う、嘘? なんのこと……」 「ねぇエヴァン、ふたりはなんでけんかしたの? おにいさまがエヴァンになにかわるいことをしたの? だからエヴァンはおこったの?」 「……そ、……それは」 「それはだれかにきかれちゃいけないことなの?」 「――っ」  刹那、驚いたように目を大きく見開く二人。  そんな彼らの姿に確信したアナベルは、二人を精いっぱいにらみつける。 「おしえてくれなきゃ、ふたりがけんかしてたことおかあさまに言いつけちゃうから」 「……ッ!?」  瞬間、絶句する二人。  彼らは気まずそうにお互い視線を送り合うと、今度は大きく溜息をつく。  そうしてどこか諦めた素振りを見せると、仕方ないなぁと呟いて、こんなことを説明してくれた。
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