82人が本棚に入れています
本棚に追加
*
説明を終えた二人は、再び大きなため息をつく。
「ほんっとケチくさいよな、エヴァンは。ハロルドはいないんだし、黙ってればわからないのにさ」
「サム。言わせてもらうけど、君はことの重大さがわかってないよ。僕らだけで外出ってだけで駄目に決まってるのに、そんな危険な場所に行くなんてもっと駄目に決まってるだろ」
「駄目駄目ってさっきからそればっか。お前の意志はどうなんだよ! 弱虫って言われて悔しくないのか!?」
「悔しいとか悔しくないとか、そういう次元の話じゃないって言ってるんだ」
「あああもう! 屁理屈ばっかだな! 俺はお前の気持ちを聞いてるんだよ!」
そうして再び不毛な言い争いを始める二人。彼らはアナベルの姿など視界に入っていないかの様子で口論を続ける。
そんな二人の姿を目の当たりにして――幼いアナベルは……。
「……ずるい」
「――え?」
「ふたりとも、ずるい!」
その声に、二人は再び目を丸くする。
「ずるいって……何が?」
「そうだよ、いったいどうしたの、アナ」
「ふたりともお外であそんでるなんて……わたし、しらなかった」
――そう。事もあろうに、「ずるい」などと曰ったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!