10.幼き日の記憶:幽霊屋敷への道のり

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*  ――そうこうするうちに、彼らは目的地へと到着したようだ。  2つ目の分かれ道から直進したところで、左側に上り階段が現れた。入口は下り階段だったので、つまりこれが出口だということだろう。  それにしても、下から見上げた感じでは階段の幅は地下道と比べ狭い。地下道は大人が横に5人並んでも余裕なくらいの幅があったが、この階段は二人並ぶのがやっとなくらいだ。  道はまだ先へと続いているようだったが、三人はギルの「気をつけろよ。急だから」という注意に促されつつ、階段を上っていった。 「うわっ、眩し……っ」  ギルの後に続いて階段先の扉から外に出た三人は、その眩しさに目をくらませた。  目の前には確かにギルから聞かされていた通り、広い墓地が広がっている。石像の表側に回ると、その先には古くさびれた教会があり、さらに墓地の周りの林の向こうには黒いススで覆われた屋敷が建っているのが見えた。 「あれが、ゆうれいやしき?」  アナベルが呟くと、ギルは「ああ、そうだ」と答えて口角を上げる。 「でかいだろ? 元は貴族の屋敷だってんだから当然だけどな」  ギルは独り言のようにそう言って、ランプの炎を息で吹き消した。そうしてそれをエヴァンにぐいと押し付けると、どういうわけか踵(きびす)を返す。 「じゃ、俺戻るわ! そのランプ、帰りに入口のとこに戻しといてくれ!」 「え……っ、君も一緒に行くんじゃ……?」 「行かねーよ。先週行ったばっかだし、遅くなると親父にどやされるからな。あっ、俺のことは気にするな? お前らみたいに軟弱じゃねぇし、走れば上道でもすぐだから! じゃ、健闘を祈る! 今度感想聞かせろよ~!」 「――あっ、ギル待って……! 僕ら……!」  マッチ、持ってないんだけど……と言い終わるよりも早く、ギルはたーっと教会の向こうまで走り去ってしまった。    後に残される三人。  サミュエルは、ランプを両手で抱えたまま茫然とするエヴァンの顔を覗き込む。 「おい、大丈夫か? あんまり嫌なら、このまま戻っても……」  気を利かせてみるが、けれどエヴァンは諦めたように首を振る。 「いいよ、ここまで来たんだし。行くよ。それにこのまま帰るなんて、アナが納得しないだろう?」  その言葉にサミュエルがアナベルの方を振り返れば、彼女は目をキラキラさせながら幽霊屋敷を見上げていた。  そんな妹の姿に、サミュエルは再びため息をつく。 「……そうだな。じゃあお前には悪いけど、幽霊屋敷を探索するとするか」  ――そうして彼らは、幽霊屋敷へと足を踏み入れたのだった。
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