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11.幼き日の記憶:いざ、幽霊屋敷へ
三人が林を抜けそのまま進んでいくと、ちょうど屋敷の裏手へと出た。塀の鍵は開いており、錆びた鉄の門がぎぃぎぃと不気味な音を立てている。雑草は好き放題に生えていて、その高さは彼らの背丈を超えるほどだ。
「雰囲気あるな……」
「……そうだね」
三人は門を通り抜け、荒れ放題の裏庭を横切っていく。するとようやく目の前に“幽霊屋敷”の全貌が現れた。遠目からではわからなかったが、屋敷の地上部には放置された庭から伸びた蔦がはびこり、そのさびれ方といったら想像以上だ。
その様相はまさに――“幽霊屋敷”の名にふさわしい。
三人はそんな屋敷をじっと見上げていた。
しばらくの沈黙ののち、最初に声を漏らしたのはサミュエルだった。
「……ちょっと想像以上だな」
古びた洋館くらいに思っていたのに、と彼は続ける。
この屋敷の規模は、侯爵家である彼らの屋敷と比べれば当然小さい。けれどそうはいっても、サイズ的には立派な貴族の屋敷である。地上三階に屋根裏部屋付き――地下も含めればさらに広い――つまり幽霊屋敷は十分広く、薄暗い邸内を足場に気を使いながら回るとなると、少なくとも一時間程度は必要だろう。
サミュエルはそんなことを考えながら、やや腰を引き気味にエヴァンを見やる。
「つーかこれ、マジで幽霊とか出るんじゃ」
そう声をかけるが、けれどエヴァンはサミュエルの声には反応を示さず、じっと屋敷を見上げたままであった。
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