11.幼き日の記憶:いざ、幽霊屋敷へ

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 そう、つまりこれはギルからの挑戦状なのだ。  “俺抜きで最上階まで行ってみせろ”――という、二人への挑戦状。  ギルからのこのメッセージに、二人は――特にサミュエルは、先ほどまで感じていた幽霊屋敷への恐怖心をすっかり消し去り――その瞳に闘志を燃えあがらせる。  相手が庶民であろうと貴族であろうと、売られた勝負は買うのが男というもの。 「見つけてやろうじゃねぇか。“銀の皿”ってやつをさ」 「そうだね。ここまでされて黙ってるわけにはいかないし。アナ、僕たちちょっと探し物しなきゃいけなくなったから、しっかり着いてくるんだよ」 「……? うん!」  アナベルの返事を皮切りに、サミュエルが今度こそドアノブに手をかける。ギギッと音を立て開いた扉の先に、暗闇が広がった。  内廊下には窓がない。それは暗いトンネルさながらだ。  けれど闘志に燃えるエヴァンとサミュエルは、その暗闇に少しも恐れをなさなかった。 「行くぞ、アナ」 「足元に気を付けて」  彼らは躊躇うことなく、確かな足取りで一歩を踏み出す。  そんな二人の背中を追いかけるように、アナベルもまた――一度だけごくりと唾をのみ込んでから――闇に足を踏み入れた。
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